ヴィタール

qyu2005-02-11

先日梅田ガーデンシネマにて。去年に予告を見た際にうわこれは見たい!と思っていた。


交通事故で記憶を無くした男。しかし医学書には興味を示し医学部に入学する。そして解剖実習の授業により、女性の遺体と出会う。それにより現実ではない世界への映像に入り込んでゆく。また同時に同級生の女との現実が絡む。が、医学生には現実とそうでない世界との区別がなくなっていくようである。そうやって益々解剖にのめり込んで行く。


映像の作られ方、映り方、どれもがハッキリとしていて美しく見えた。特に画面構成の様が何度もツボにハマった・・・。無性にたまらなくなった。最初の方での父親が車を運んでくる直前の博史(浅野忠信)と母親(りりぃ)のシーンであったり、博史と涼子(柄本奈美)がバサリと床に倒れこむシーン、涼子の実家でのシーン、解剖実習を数日繰り返すシーンなどなど。どれもグワっと飛び込んでくる視界にやられた。あぁすごく好き...
全体に青みを帯びたような色彩がまた好きだった。特に実家での雨のシーンは。
そこにすんなり入り込み、また全く違う明るみを帯びた地の世界を同時に行き来する浅野忠信がとっても良かった。なんとも言えない・・・。解剖実習にのめり込む姿がとても不自然でなく、その不可解さがとてもきれいだった。美化されているということはあまり感じず、しっかりハッキリしているものの方が強く感じられた。喪服姿での後姿に吸い込まれた。博史の住んでいる部屋が良かった。いいなぁ〜。つうかこの人って目の感じがビートたけしにソックリだなぁと思う。顔がすごい人だ。
細く長く白い腕を振りかざす柄本奈美のダンス。解剖されている遺体として同時に目の前にやってくるというのは、ある程度の恐怖感を感じた。腕という一部分でさえも、とても大きなリアルさが見えた。ただこの人、なぁんか顔と身体のバランスがちょっと変に見えた。なんだろう?
郁美役のKIKIも良かったけれど、喋りにちょっともたついたような感じを覚えた。存在感はとても迫力あるというか、凛としたものが冷静に画面全体に行き渡る感じでとても伝わってきた。顔きれいー。
岸部一徳がまた良かったー!目の下の隈だかなんだかわからん顔の作りが不味いくって良い。
りりぃさんが好きなので、浅野忠信と親子役というのが、また良かった。


なんでもレオナルド・ダ・ヴィンチが博史のモデルだとか。それ知って、映画を見ていた時に感じた何かが何かと繋がった気がした。映画では沢山の解剖デッサンが出てくる。細部まで細かく陰影のハッキリとしたどれも綺麗なデッサンで、あぁあんな描けるようになれたらいいのに・・・と強く思ったものだが。そう、ダヴィンチの解剖デッサンがまた結構強く覚えていたから、その記憶が何か揺さぶったのだと思う。出てくるデッサンは本当にどれも美しくて羨ましくなった。
デッサン画に限らず、この映画に出てくる作品としてのモノたちはどれも見応えがあった。解剖される遺体はもちろん、異世界での大きな岩石のようなものとか作ったら楽しそう〜と思ったり、とにかく美術関係さんたちもまた素晴らしいな〜と思った。


メイン舞台となった解剖実習室というのが、廃病院の調理場を使ったとのことなんだが、ななんとそこの病院というのが浅野忠信が生まれた病院だったと。すげー・・・。
塚本晋也のこの作品に向ける考えなどはとても気持ちよく作品を見ることによって解釈出来た気がするかんじ。とにかく凄く好きだった!良かった!繰り替えし見たいと思った。もう1度見たいけど、もう東京周辺ではやってないんだよね・・・。激しく残念・・・。とても良い映画だと思うんだが、なんせ宣伝少ないような?いいなぁ・・・


最後に流れるCoccoの歌が、とても気持ち良かった。