映画「愛を読むひと」を見た。新聞で記事になってるのを読んで気になったところに母に誘われそのあとで「リトル・ダンサー」を撮った監督と知り、それは!と楽しみになった。久しぶりに映画館で映画を見たせいもあってか、やっぱり映画って映像っておもしろいなーと思ったりした。
前半での15歳の少年が20歳以上も年上の女性との体を求めあうシーンの連なりはとても美しく、音楽と合わさってまろやかでとろけそうな二人の時間がいやらしさをこえて潔く感じられる。また後半での年月を経て、ナチスの戦犯として捕らえられている女性のもとへ、在る理由から大人になった少年は朗読したテープを再生機とともに送るのだけれど、ここのシーンの連なりがまたとっても躍動的にその時の両者の心情、新しい何かを発見する、得るという行為、行動の大きさをじつにみごとに音楽と切り貼りしたカットにより表現しているなあと思った。それは前半で目にした体の直の接触から生まれる熱のゆらぎとは違う、それぞれの事情を経た時がたった二人なんだけれど、だからこそ、その停止していた二人の関係がまた動き始めて紡ぎだされていくもののエネルギーというもののみずみずしさを、映像の手法により深く味わうことを感じた。そしてふとこれは「リトル・ダンサー」でも魅力的に使われていた効果と似たものかなあと思った。喜びや怒りをダンス、体の動きで表現してしまう少年と、やはりまたそこにあわさる音楽との効果がすごく好き。べつに細やかにカットをつなぎ合わせていくことは目新しいことでもないだろうけれど、その手法に登場人物の心情の表れを見出すことができるというところですごくすごくよかった。まるでフィルムそのものが熱を帯びたようなものを感じるという点で、前半のものとは中身は違うけれど、二人のというより特に男性側の心情を強く感じた。
女性はある日突然、少年の前から姿を消す。若い少年にとって最後となる二人のやり取りの中での女性、ケイト・ウィンスレットのまなざしが優しくも厳しくて大理石のような硬質さを感じさせる。首を左右上下に微かに振って少年の質問に答える仕草も、直前まで激情していた感情を終息させ、あきらめのような、慈悲のようなものさえ感じられる。またこのシーンをはじめ、光を横から取り入れたシーンは非常にきれいだ。二人の出会いのぬれた石の質感の影のシーンも印象的。そこかしこに、ひどく植え付けるようではなく、ささやかに印象的な一場面ずつを映画で語られる時間の中に感じることができる。
決して戦争の事を大きく訴える映画ではないのだけれど、その時代に生きた人々のどうしようもないありようというのを感じ、知ることができたという点で、以前から邦画の小さな物語を見ることが多い私にとっては外国映画で触れることのできるものの意味を改めて感じもした。ドイツの風景いいなーとか、男の子の衣装ちょーかわいいなあとか、あと台詞も色々どきっとする映画だった。




こないだ大学時のゼミの先生から突然メールがきてびっくりした。メールを開いて送信者の名前に○○○○(ひらがな)先生と書いてあるのだがほんの一瞬信じがたい。大体なんでひらがなで登録してあるんだろうと思う。内容は事務的なようなことで、ある写真をあるものに使いたいんだがいいですかということだった。こここですこし感動するというか、先生の人間味を確認するのが、学生であった私ながら頼みごとということもあってか、きちんと丁寧語を使っているところ。かといって最終的に堅苦しくはなってないんだが。ただ、ですますではなくて。いいですよと返信してついでにそういえば息子は小学生になりましたかと問うと、変身で息子写真を送ってきてくれた。お、あんまりかわってない。しかもその写真をよく見てみると、どうも背景に見覚えが。ああそこは懐かしの先生の研究室の正面にあるいつもゼミの時間に使ってた教室ではないか。ああなつかしいなあ。その教室は小さくて、先生が主に使うほかは、もう一人の先生が週に一回使っているだけじゃないだろうか。一番愛着ある教室だったという事を、先生からの写真を見て考えた。

それから少しして、同じゼミだったいまだに大学に籍を置いているtさんからもメールがきた。卒業式以来会ってもないしやりとりもしてないように思うので、驚く。用はないらしい。今から思うとtさんもわりあい強気な風情だしてへらっといばってるけど、実は寂しがりな面があり(だれでもあるかもしれないけど)よわよわしい吐きごとをなかなか素直にはださない人だったなあとか思い出したり。なんか、人と仲良くなるのうまいわけではないけどかわいがられたり、認められるところっとうまく入っていったり、ころっとやっていけるようなとこ、他人ごとに思わないのかもしれない。でもなんか結局顔も肢体もいいからどうにかそれによって特典としてうまくやっていけそうで差別感を持ってしまうような。




飛行機の中で見た「卒業」という映画がこれがなかなかけっこう面白くて、劇中で繰り返し使われていたサイモン&ガーファンクルの特にSounds of Silenceがあたまにこびりついている。でもたまたまラジオで流れてるのを聞いた時、なんあちがうなあと思った。映画は60年代のものだからかやはり映像も音も独特にぢりぢりしていた。そのぢりぢり感が非常にこびりついているから、ラジオで流れた錆をおとしたようなたたずまいはなんかしっくりこなかったのかも。「卒業」はいいなーおもしろいなー。ダスティン・ホフマンのストーカーのような怪しくねっとりじめっとしたような目つきもいいけど、前半の若者としてのはっきりしない悩ましげな様子がいい。そしてそれを象徴したようなプールのシーンがすごくよかった。あそこでぐっとひきこまれた。面白い映画。