先週の金曜日、22日、おもいたってピットインへ芳垣さんを見に行く。きっとお客さんすくないだろうから当日で行って座れるだろう〜とふんだ。前から行きたいなとは思ってたけど、まあここで行けたのはなんの力のおかげか。ずっと崩壊感がつづいていて、自分自身がお菓子の食べカスみたいにぼろぼろとくずれなくなっていくことに、危機感があったのかもしれないと思う。これは危機感か?と自分で思ったけど、自分で問いかけて意識的になっちゃうとわからなくなる。

それにしてもまた久しぶりになってしまって、いつもどおり、甲州街道の方から来て、あれ、どこの道いくんだっけ…とまよう。あそこらへんの信号(というか見えるもの全部)がどれも同じようなのと、妙に暗い地帯が現れるのとで、いつも、あれれ…となって、今回もまた少し進む方向まちがえた。でも、曲がる手前に王将となんか飲食店があっていつも外にテーブル出ててそこで飲んでる人たちがいってってのは覚えてるのでそれを見つけられたら大丈夫。あのどこにでもあるようなドラッグストアの景色とか、ほんと間違いか否か、ここどこだっけの錯覚をおこさせられてしまう。

この日は芳垣安洋 RADM Jaz、メンバーは芳垣安洋(Ds, Per)、 曽我大穂(Flute, Hamonica, etc)、 高良久美子(Vib, Per)、 Gideon Juckes(Tuba)ほか とのこと。曽我大穂、Gideon Juckesははじめて。家出る前に少しだけ情報知る。20時過ぎに始まったときは10人くらいしかいなかったような。予想はしてたがすくない。

はじまるまえに2ndセットではゲストをむかえる、ギターで歌をうたうとのことお知らせ。うーん、芳垣さんと一緒にやる人でギターっていうと、大友さんと内橋さんしか思いつかない。でも歌うか?まあ気楽に考えた。

1stセットは2曲。1曲目の方が2.30分あったような感覚だけど、なんとラストにVincent AtmicusのRe-Boptizumの一部分につないでいった。ヴィンセントでの演奏より芳垣さん以外の3人がならすメロディラインはテンポおとしているも、その横で芳垣さんは音数響かせつつ早急なリズムではしる、といったかんじで、改めてこうやってきくと、なんつ、ややこしい曲なんだ、と思った。とくにメロディラインのテンポ?休符?のとりかたは、ギクッとするような、なんかDCPRG思いだしたり。テンポのいい気持ちいい音できいてると、ここまで複雑な感じは思わなかったな。同時に音の連なりの良さ、ポップさも確認。四人でヴィンセントの曲をやるというおもしろさがあった。

どちらの2曲にしても音が奏でられることについてよくよく考えさせられるものだった。ただ受動的であるんでなく、能動的に音楽を聴けるかどうかが私の中では重要と思う。いかに聞けるか、どう聞けるか、そういうふうにして近づける音楽が好きと思う。べつにこれはこうしなきゃいけないという強制的な呪縛的なものでなく、それがひとつの楽しみ方であるし、そうゆうこと感じさせてくれるから音楽がすきなんであって、まあ好きな音楽はそうゆうことになるというか。

特にこういった、どこまで(どのように)曲作りにおいて綿密な構成が練られているのか察しをつけにくいバンドの演奏は、どんなものがどんな風にうまれてくるだろうか、といった期待とそれを自分はどんだけ聴けるもんだろかという緊張感が私にはあるし、でも、聴きたいんだ、という好奇心、意欲みたいのもあるから、うきうきわくわくしながらの自分の耳の挑戦みたいなかんじがあるように思う。何かを感じなきゃとかでなく、いかに集中して音を見れるか聴けるか、個々でも全体の空間でも、っていうかんじで、ほんと自分内挑戦だな。

こうゆうバンドの音のありようを言葉で表現するのはどうしたらいいものかさっぱりわからないのでできないからしないけど、今回思ったのは、音が音をつむいでるというか、ひっぱてきてるというか、音の変化していく(強弱であり楽器そのものであり音の数であったり静動であったり色々な面での)連なりのなかで、今出てる音がつぎの音をよんでいるなーということを感じた。必然性とかじゃなくて、もっと単純に、自然にふつうなこと。個々の音であるけど4人の音として鳴っていくなかで、突出してひきいていくものがあるのではなく、調和とかってんでもなく、ひとつの音がほかの音をよびよせてて〜という関係が四者互いに生じてて、もしかすれば波の音みたいなものかもしれん。なんか突然とんだけど、イメージはこんなかんじだ。

4人の音としてひとつの円となってる枝がうかびあっがてるんだけど、そこからこまごまとにょきにょき小枝がいろんなとこへ伸びてる。ま、単純だけど、こうゆうかんじ?かも?私の頭ん中では平面でなく立体のイメージだが。

なんか話がどこへやら。個人的には芳垣さんの音のなにがすきなんだろう〜と考えた。芳垣さんのドラムでいえば、出てくる音がその瞬間瞬間すかさず自分のおなかのあたりだかにとびこんできて粒がはじけ踊ってるかんじが起こる、というあたりがひとつだよなぁと思う。というか改めて芳垣さんの演奏に驚き感心し感動するわけだった。お客さん少ないからよく見えて、どうやって音を出していくのかということについてよく観察することができた。客席に隙間があると音の聞こえ方もかわってくるよね、と思うけど、それは2ndセットでも更に確信するのであった。お客さんも20人くらいにはなってった。


2ndの1曲目はクルト・ヴァイル(ドイツ、1900〜1950)という芳垣さんが好きらしい作曲家の三文オペラの中の一曲。なんとかのバラードって曲で、忘れてしまって、家帰って調べて、次の日図書館で三文オペラのCD借りてきた。たぶん『ヒモのバラード」』と思う。これを演奏。これ、はじめて聴いてもゆったりとしたベース音のきいたきれいな曲だなと思ったけど(なんかすごく想像力刺激されるような感じをうけた、星とか夜とか熊とか断片的なものだけど)、CDでクルト・ヴァイルの他の曲聴くと、おおなんかすごく聴きやすい、おもしろい、いいメロディ。ほうほう、勉強になります。

そして終わったとこで横の控室ドアから出てきた人影。うーんこれは誰だ?と思って、芳垣さんが喋ってる間に、あ、もしかして―と思ったら芳垣さんからの紹介、ゲストは永積タカシであった。うわー、ほんもの初めて見るかも?わからん、どっかで見たかどうか。テレビで見てた印象が強いような。でもCDはたぶん一切聴いたことないなー。どれくらいの人気とかもよくわからん。でも芳垣さんが一緒にやるというのはわかる。高田連さんやオオヤさんともやってるから、感じ、として、わかる。だから直前に気付いたのかも。そんで芳垣さんがこういった人たちと一緒にやる歌もの聴いてみたいと思ってたから(高田さんで少し聴いてるが)、永積タカシ登場おおラッキーと思った。
芳垣さんもあまりご存じない人も多いと思いますがみたいに紹介してたけど、まあたしかに場内の雰囲気からしてそんな感じがあり、私でも音源ちゃんと聴いたことなかったわけで。そんでゲスト出演も直前に決まったようで、公開もされてなかったから、永積さんはアウェイなかんじだったろうなあ。でも、ピットインで永積タカシが歌ってるっていうのはおもしろいような、珍しいことのような、結構なサプライズだと思った。
そして演奏する曲もなんの打ち合わせもしておらず、永積くんが何歌うのか僕ら知りませんと芳垣さん。4人はその場であわせていくとのこと。うおーーさすがーー、と思うも、結構この事実だけであっとうされる。

1曲目はボブ・ディラン(詳しくないので曲名も言ってたけど忘れた)。でもはじめだけ英詞であとは日本語だった。しかしまあはじめて聴く永積さんの声、うわあーってかんじ。あーうたを歌うひとの声だーと思った。2.3曲目もカバーと思う。芳垣さんらはもちろん知ってる曲もあったと思う。でも、それにしても、それにしたって、すごい。ほんとに今初めてあわせてるの?ってわかってても言いたい。だってだって、すんごい音楽がたちあがってくるんだもん。今着実に音楽を作り出している、その瞬間を目にしてしまった。1stのとき、どうやってこの音楽が生まれてきてるのか謎すぎるよなーと思ってたけど(いつもだいたい)、ああこうやって生み出されるのか、と回答ではないけど、納得するほかなかった。永積さんの歌とギターに耳をすませ、空間にひっそりしのび、各自が音で歌をひろげてく。そのなんか音の芽生え様がすんごくいいんだな。ふぁっと光の量がふえてくかんじ。ひとつの歌がこんなにひろがりようがある、許容がある、そうゆうのが聴いててとても楽しかった。つうか、みなさんすごいです。
4曲目だけ、永積さんの曲ではないかと歌詞や曲の流れから察した。スローで静かで私的歌詞が強い曲で、結構どう出るか聴き定めてる雰囲気が感じられたけど(芳垣さんは別かな)、だからこその面白がどんどん出てきたようにも思う。見てるこっちも緊張した。どんな音を出すかということは、楽器自体を、音を知っていないとできないものだよな、と改めて思った。芳垣さんのドラム、パーカッションはほんとうに表情豊かで打楽器だけどピアノくらい情感豊かな演奏姿と思う。
ぜいたくだなーと思った。永積さんの声がいい感じに客席の空間のほうにまでぐるーとアイスコーヒーにいれたシロップみたいに溶解していってて、これはやっぱ満席じゃないからいい気分なんだろうなーと思った。歌ってのもかなり久しぶりにちゃんと聴いてるかんじだった。

アンコールはチリのシンガーソングライターの、世界的に色んなミュージシャンが演奏しているという『平和に生きる権利』という曲。今度は永積さんが初見でうたうもよう。ほんとはスペイン語の歌詞がついてるらしいけど、ラララで歌うと。曽我さんの吹くフルートのメロディラインにあわせてラというかナみたいなかんじで、はじめはおそるおそるっぽかったけど、さすが、ラストのもりあがりにはすばらしい声音、量でこたえていて、聴きがいのある曲にふくらんでいった。いやー、これは、すごくいいライブだった。来てよかった。芳垣さんかっこいいいーー

ところで一日たって思いだした。永積さんを何でよくみていたのか。PVなのかなとか思ってたけど違った、MUSICAというやはりスペシャの番組だった。すばらしい番組だった。録画もしてよく見てたからなー、そうかそうかと納得してすっきり。



これだけは早く書かねばとおもって、かけた、のでよかった。