私はそれを探していた。なぜならそれがなかったから。だから私はそれを探していたが、ほんとうは、それがどこにあるかを知っていたんじゃないだろうか。それは正確には覚えていない。けれどそんな心象が、背信のような感触の覚えがある。知っていることをわかっていながら、そこを探さず、それの不在を求め続けた。ような、そんなんだったような気がする。私にはそれがないことが必要だった。ないことにすがった。そしてそれを盾にそれを求めた。それがなく、それを求めることの正当性が、なによりも説得力があった、私自身にとって。それがないんだから、ないのなら、私はここに立ち止まるのが正しい。
そんな理論があったことを思い出した。