連休最終日の23日は横浜中華街の同發新館でキセルを見た。月見ル君想フの企画もので、去年につづきの2回目と。5月のパラシュートセッションもあったし、月見ルは独自の企画がいろいろあって面白いんだなあ。
お店が見えてきたと思ったらちょうど兄が一人でぶらりとリュック背負って歩いていくのを見た。えんじのTシャツを着ていたからよほど好きか何枚も持っているのか。お店の裏の駐車場みたいなとこで開場を待つ。


会場はっていうと、お店の宴会場みたいな広間。床は絨毯敷きで椅子がほどよい間隔で並んでいる。客席は100くらいなのかなあと。ほんのり赤暗くてゆるい雰囲気。ドリンクもソフトドリンクにはプラス月餅とか、タピオカドリンクもあったりする。兄弟とゆうこさんの3人のセットだとわかる。連休中もずっと3人でまわっていたらしい。

だいたい時間どおりにはじまる。弟は白のキセルTを着ている。そして毎度ながら弟はノートをもってそれを膝のうえに置いて開き見たりするんだけどそれがかわい〜と思わされてしまう。あのノートのかわいさがずるい。

1.庭の木、初っぱなから弟がうたう!なんかそれだけでもずいぶん違う、違う景色がはじまるような。うあーやっぱ弟の声もいいなあって思わされる。まあいつもだけど。いつまでも少年みたいな声でゆさぶりをかけられる。歌詞とあいまってぐっと空間が沈みこみ始める。
2.ベガ、近未来からベガやってくれるの嬉しいけどでも私はハッカも聞きたい。ハッカが好き。
3.君を見た、夏の子供か君を見たはやるだろうなあと思っていたらこっちだった。ゆうこさんのドラムと兄のギターが印象的だと思う。ときどきは雨に〜という歌い出しとゆうこさんの刻む音がひとつの風景になる。
4.花・太陽・雨、カバーアルバムのなかで一番ライブで聞いてみたいと思っていた曲。まさかまさかこんなはやくに聞ける機会がくるとは。この曲をすごくいいなあすきだなあと思ってしまう自分はやっぱりキセルが暗い曲やるの好きなんだなあと思う。まず耳をひいたのは弟のベース。わ、わ、すごくいい、映えてる!もうきゅーんとするくらいいい。そこにゆうこさんのドラムが加わってこの曲の静けさや暗さ、そっとした隙間のある静物の空間が現れてくる、それがすごくいい。そして兄がしぶい顔して歌う。3人のバランスが見事だと思う。ひきこまれてなにも見えなくなりそうな気さえする。
5.teach your children
これ、ライブ行く前にちらと調べていたら原曲はcrosby,stills&nashのカバーなんだな!それをふちがみとふなとが訳して日本語で歌っているのをキセルがさらにカバーと。そうだったのか!そう考えるとこれは訳詞がすばらしいんだなあということがわかる。訳する側の言葉のおとしかたが、視点がするどくてあたたかい。この曲の二人のはもりはすばらしい。ときどき起こる二人の声なのにひとつの声になっているみたいな。こだまみたいな響きがあるんだよなあそうゆうとき。それ聞けるとうわあーってなる。
6.夢のいくら
こないだの野音でも聞いたけど音源からぐぐっとアレンジきかせてうき立つようなポップさでかわいらしいことになっている。シャボン玉がぷくぷく浮かび上がってくるみたいなー。二人の声がいちばんやわらかく溶けあってくる感じ。もはや石けんのあわあわみたいな。
7.そこにいる
ちょっと久しぶりに聞いたかも?野音ではやらなかったかな?いいなこれと再確認。私のなかでは別名殺されるのうた。ころされる〜って兄の声で歌うところがとても好き。
8.ナツヤスミ
これも野音でマジカルを演出していたなあ。そんな野音を思い出しながらでも今のこの部屋で広がり充満していく今日のこのときこの場所にぎゅっと抱きしめられていくような。なんていうか、ほれてしまう。ほれてしまうとしたらこんな時のこんな温度のこんな色なんじゃないかって思う、そんなん。キセルらしいトリップ感。冬に生まれた僕も夏を生きていたりするっていうところがぐっときちゃうのは私も冬生まれだからかな。
9.バラボン
こちらは永江孝志さんのカバー曲。ワンフレーズごとの歌詞が頭にひっかかる。ちょっと不思議。バラボンの歌詞はつい口ずさんでしまう。永江さんも京都の人なんだな。弟はピアニカ。
10.年輪・歯車
高田渡さんのカバー。この曲が歌詞カードに一部意向により歌が歌詞と異なりますって書いてある曲だと思うんだけど。なんでそうしたのかっていう話とか聞きたい。キセルはこれ以前にも鮪に鰯や系図高田渡さんカバーしてるけど、なんかまたぐっと高まった感がする。そんでこれはギターの音色がめっちゃきれいだなーと思っていた。ライブでもそれがそのまんま、いきいきときらきらとしていて胸うたれる。とろ火でちいさくぐつぐついっているおじやみたいにあたたかくてやわらかな音。弟はのこぎり。
11.絵の中で
これも弟の歌だけど、兄がコーラスを変えていれてきていたとこにぐっときた。一枚のアルバムの中の一曲一曲がときの流れのなかでそれぞれに育っていくようで、それを見ていけることが楽しい。
12.ひとりぼっちの人工衛星
ゆらゆら帝国のカバー。弟はベース。やっぱ兄の声がばっちりはまりにいっているところがすごい。
13.悲しくてやりきれない
ザ・フォーククルセダーズのカバー。アルバムのなかでも最後の曲で、カバー曲としては一番これが興味深いと思っていた。なんでこうゆうアレンジになったのか、どんなイメージをもっているのかを聞いてみたい。弟はKORGのミニ卓みたいなんを膝にのせて、音源でも入っている鳥の鳴き声の音などを操作していたのかと。その音はどこか外で撮ってきたのかなあと思うんだけど、ザワザワガヤガヤした音なのにすごく静ひつになっていく、おだやかでひっそりとした世界へ連れていかれる。新たに内側につくられる層のなかへ。
14.柔らかな丘
15.時をはなれて

アンコール
16.くちなしの丘
なんかこの曲は兄のつくる曲だなーって気が急にしみじみした。ふれたことのあるぬくもりのよあな曲というか。みんな前から知っているような曲の気がしてしまう。すごく良かった。

17.たまにはね
この曲は最近アンコールでもってくる定番かな。二人でぽろろんと聞かせてくれるところがそっけなくおちてる松ぼっくりみたいだ。松ぼっくりがころがってくるみたいだ。

ダブルアンコール
18.星空
再度拍手でアンコール、にこたえて出てきてくれた。しかしやっぱりもう曲がないっとな。なのでお客さんから募るも最初に出たのがエノラゲイ。できますよ、できますけどこれで最後でいいんですかね?と兄。ほかにもお客さんからあがるもののイマイチ兄弟にゴーサインがでない。弟はノートをぱらぱらしながら君の犬なら…とか全然リクエストと違う曲を言ったりする。兄弟でどうしようかーとなったところにあがった星空でついに、できますよ、とすんなりやってくれた。これは1stの曲だしはじめてライブで聞いたけど、本編の流れとはぜんぜん切り離された状態でよかったな。歌がぽつんと落ちてくる。


二人の喋りはこれまた終始かなりゆるかった。野音のときはやっぱりしゃきっと進行していたことを感じさせる。こちらもワンマンとはいえそれぞれの場所による違いがまたたのしい。まず最初の喋りで会場の雰囲気に対して異国感たっぷりですね。と弟が言ったら異国っていうか中国?とかえす兄。たしかにな!たしかに異国っていうか中国よね、中華よね、兄のつっこみが適切すぎてる。このくだりをもう一度ふたりでやってるのがおもしろかった。
後半には兄が長いこと一緒にやってるけど今が一番弟とmcでかみ合わない気がすると言い、さらに普段の会話でも2倍くらい時間をかけてるきがすると言う。弟はそれに対してそうですかねえ?と言うも、兄さんはのみこみが遅い、という容赦ないつっこみをここで入れてくるから兄もお客さんもどよめきと笑い。弟はわりとさらっとはっきり言うよなあ。そんなとこに親近感はありつつ。このあとにももう一回のみこみが遅い、なんで分からへんのやろうって思うとかって言ってたから本人はいたってまじめにふつうに言っているんだろうけどそのやりとりが素の兄弟のまんまって感じで、そうゆう場面はまあときどきあってそれはこうゆうゆるやかライブのときならではの見ごたえだなあなんて思ってしまう。2人のかみあわない喋りからの演奏に入るとぐっとがらっと空気が変わる様がまた楽しいんだ。

うーん、やっぱキセルはこうゆう空間で見れるのが好きだなあ。大きいとこでのワンマンはまたべつものって感じがする。どっちもあるのが今のキセルなんだと思うけど、お客さんと空間ともに彩られていくような味わいがあるのはひそやかな特別さを感じる。もうすごく良かった。2時間たっぷりもやるとは思ってなかったのもあるけど、でもキセルは時間にしばられずともぐわあああともっていかれてしまうところが、そこは、昔と同じだなあと思う。明るい幻からのカバーアルバムをだしてのキセル、すごく楽しい。