11月に見たもののとりこぼしおさらい。vol.1

まず17日山本精一@スターパインズカフェ、2daysと情報が出た時まよったけれどとりあえず弾き語りソロに行こうと決めた。その心は、まあ去年バンド形式で見たし、一昨年のインストソロもよかったし、山本さんのソロの弾き語りってなんかこう行きずらいようなとこでよくやったりするしなかなかタイミングをあわせにくいところがあるから行けそうな今に行っておくかと。でも、新譜の童謡聞いたらバンド形式で録ってる曲がめちゃくちゃよくて、うっわーと思った。こりゃバンドのほうも行きたいと思ったけど、他の予定も詰まっているし仕事も直前まであやしい気がしたし。結果的に体調がこの週はすぐれなかったから二日目も当日券でいけたろうけどやめておいた。
そして昔々から微妙に遠い吉祥寺に来るのはなんだか億劫とおしきっていたスタパもついに初めて訪れたのだった。一度行ってしまえばあとは楽になるだろう〜と。中はピットインの小ちゃくなった感じに似ているかなと。椅子とテーブルがあって雰囲気は似てるかなあと。前から三列目くらいだったと思うけど、けっこうゆったり椅子もとってあった。どうも二日目のほうがお客さんは多かったみたいだけど。まあわかるけど、でも山本さんの弾き語りソロってきっとなにかやみつき感的なものがきっとある。あの山本さんのギターだけが鳴っているというのは、なにか他では味わえないものが出てくる感がある。
曲は童謡と、あとはなぞなぞからもけっこうやってくれた気がする。羅針盤曲もあって、アンコール含めたら2時間弱も。明日も明後日の京都もあるんで手ぬきます、なんて言っておきながらんなことないような充実。
この日は朝が早かったこともあって、途中うっすら眠くなったりする。でもなんか目の前に歌っている山本さんがいると思うといきつもどりつぐらぐらしてくる。ほとんどの演奏はエレキで少しだけアコギもあった。すべてが生々しいと思う。一番はエレキで弾いて2番からアコギで弾くってときも(逆だったかも?)、エレキかかえたままアコギをとってそのまま弾くからゴツンとギター同士がぶつかった音とかするんだけどそんなんも一切関係ない。なんていうか、それはそれ、にすぎないというのか。
山本さんという人はなぜか16のころから羅針盤やソロの仕事でひかれてきた人だ。もちろんROVOもあるけど、ROVOはまた別口かな。がしかし同時に得体の知れぬこわいようなよくわからない変な人という印象も強すぎてなかなかずっとライブに行くのはこわいし、今でもこわいし、まあだから好きだとは思いながらライブ経験は数が少ない。でも年取ってきて少しは度胸もついてきたから、これからはもうちょい積極的に見ていきたいと思う。てことで今月もまたソロライブ」2daysあるってんで1日は予約した。22日のカバーだけやるってライブも気になるけど色んなためらいをまたもってしまうところだ。でもおもしろうだああ。



山本さんのライブ行く前には、仕事が偶然早く終わって時間がちょうどよかったので新宿で映画FOUJITAを見た。私は藤田嗣治が好きだ。数年前に近美で回顧展があったのを見に行って、そのころからあまり絵画の展覧会はいかないし今もいかないんだけれど、藤田嗣治はその生きた人生そのものもまた興味深く、魅力的だ。今、近美で所蔵品展のなかで藤田の全所蔵作品を展示してるから、映画を見に行く前にそれは見に行っていた。戦争画をいっぺんに見れるというのはとてもよかった。
さて映画はオダギリジョーが主演、小栗康平監督が撮ったっていうんだからうわこれはきっと面白いだろうと思っていた。みる前にインタビューで藤田のことを伝記的に描いたりはしていない、説明もうすく、それよりその時代と藤田がどう向き合っていたかというのを描いているみたいな話だったから、まあその辺の背景は知っているからそれならなおさら楽しみだと思った。藤田のなにをどう切りとったのか、ということが。
平日昼間の新宿武蔵野館はしかし老人がいっぱいだった。びびる。たしかに前からそうだけど、ましまし感。藤田のアッツ島玉砕の絵はむかし、戦時中、その絵の前で跪いて拝んでいる老人がいたという話をちらと思い出した。そしてそれを彷彿とさせるシーンがまさに映画のなかであった。たしか青森という設定が同じの気がする。
それにしても上映開始のブザーが鳴ってから思い出したけど、そうだ小栗監督の映画は眠くなるんだったということ。繰り返すがこの日は朝が早かった。だもんで、どうしても、暗い画面が多いから眠くなっちゃうんだよー。すうごい戦った、眠気と。その静けさ、静寂さが美しいんだけどもさ。最初の方のシーンは、まるで舞台劇を見ているかのようだった。作り込まれた静物、動かない空気、そこだけ切り取られた、分離したエピソードの世界のようで浮いている。その独特な味わいが印象的。
オダジョーの藤田はまず見た目でいえば完璧だと思った。オダジョーにしかできないとさえ思う。オダジョーの説得力はでかい。すべてどの場面でもその色になじんでいる。小栗監督の映画はやはり場面の力が強いというのか。各場面の色や温度が、通じつながっている。空気の粒が均一に舞っている。そのなかで、やわらかな物腰やさしげな視線、おだやかで率直な声、ことばが藤田のなかにあるものやまわりに漂うものをこちらへ想像させてくれる。アッツ島玉砕に関して、命がけの腕試しですよ、と言ったセリフが印象的だった。ここらへんはやはり近美の展示を先に見に行っておいてよかった。



26日モーサム@下北沢ガーデンはヒトリエにゲストとして呼ばれてのライブ。ヒトリエyoutubeでちらと見たけど、今はやっぱり声が高くて中性的な感じのバンドが多いのかなあと思う。こうゆうとこで常に時代は変わっていっているんだなあということを感じる。私が十代の頃の音楽シーンとは全然違うし、私はその時代を体験したんだなあと思う。昔はみんなもっと全体的に暗かった気がする、今と比べると。今はみんな歌ってる内容は暗そうでも外へ向かう明るさがあるっていうか、環境や状況がまず違うからそうなるんだろうと思うけど。
そしてガーデンもはじめて。後ろは段差で高くなっているけど、中途半端なところに立っている人はスタッフさんに前のフロアへ行くようしつこく言われていた。前のフロアでももっと左右へいくよう言われてて、なんかそこまで言われなきゃいけないのはどうかなって気もした。ある程度は言って仕切らなきゃいけないだろうけども、どこで見るかの自由は欲しい気がする。でも出入りの通路が狭いからとりあえず詰めさせないとなんだろうかなあ。
中は若い人が多くてかるくたじろぐ。なんかやっぱ若さってすごいな、でてるんだなって思う。きらっきらしてるわ。最近そんな客層のライブ行ってなかったから、テレフォンズのラストパーティは近いかもしれないけどもっとあそこは汚いなにかもぐちゃっとしてるかんじで(決して悪い意味はない)、うわあこんなに純粋な空気感ひさびさに見たなって気になった。そして同時に自分も十代の頃はこんなだったんだろうかと思って恥ずかしくなる。なんなんだあれは。十代後半と二十代前半のお客さんが多かったんだろうけど、もうそんなんの区別もわからないが、でも、こう、音楽やライブに対しての待ちかまえ方が若いんだよなあ多分。わくわく感が外に出てきちゃってるんだよみんな。それがまぶしすぎる。じゃあ自分もそんな同じ気体みたいなもの出してたのかなとか思うとはずかしい。もう自分の十代なんてはずかしくてしょうがなくなってくるんだから年をとった証拠だろう。
そしてモーサム、勇さんはパーカーかぶって出てくるから前の方のきっとヒトリエファンが多いであろうお客さんが一瞬空気とまってるかんじになってて苦笑、タケさんはこないだと同じYOU ARE ROCK'N ROLLのTシャツ、ももはピンクフロイドのTシャツと、もう相変わらずばらばらでいいかんじ。ももが出てきたときはお客さんが明らかに盛り上がったので、ヒトリエの若いファン層にも届いてるのかと思うとちょっと面白い。ワンマンとかじゃちょっとないパターンだけど、やっぱももはそうゆうとき嬉しいのかなー。
凡人やりそうだなっと思っていたら、やはり一曲目は凡人のロックンロール。前方のお客さんがすごくノリがよい。若いお客は違うなってかんじがする。その子たちからしたらモーサムなんてずいぶん年上のバンドだろうと思うけど、積極的に聞いてくれてる感じがしてめずらしいような気さえした。若い子たちにも少しは受けるんだろうか。でも私は今自分が十代ではじめてモーサムを見たとしても、やっぱり惚れるんだろうなあって思った。すごく出だしのよい凡人だったから、なんかそう思った。若いお客さんが多かったからついそんなこと思っちゃったんだな。
しかしタイバンのライブのときってモーサムはやはりあげてくる。今回は客層を意識したところなどもやはりあるんじゃないかと思う。もものよそゆき感が半端ない気さえした。それでお客さんが盛り上がってくれるから余計あがっちゃうんだろうなと思った。イサムさんなんてパーカーの下に耳当て付きのおなじみ帽子かぶってるし最初はたぶんサングラスもかけてたようだった。なんかもうそのやってろうという挑戦的な感じ。タケさんも最初からmcあげあげでくる。水野さんは相変わらずずっと楽しそう。今回は水野さんもよく見えてて思ったけどわたし今の水野さんの髪型すきだな!
そしてトーキョーロスト、平民貧民代貧民、you are rock'n' rollやはりツアーの勢いの中心をそのままもってきたような感じ。平民貧民大貧民は今まで聞いたなかでは一番好きな感じだった!もともと音源で好きだなと思っていたけど、ライブだと前後の曲との勢いでちょっと良さが隠れてしまう気などしていて、しかし今回はたしかトーキョーロストのあとに何か誰か喋ったんじゃないかな、だからきっちりと、曲の連続じゃない形で音が鳴り始めたのもきれいで良かったし、音があっていたということなんだろうとこのあとわかる。音の暴れまわる感じにがっしり掴まれる。
次はnutsだが、これがすごく音が悪く感じた。要は高音が全然出てないのだ。でもそうゆう声ぜんぜん私のいた場所の問題なのかどうか。イサムさんのショルキー、もものギターがこの曲のメインだと思うんだけどタケさんのベースががっつり目立っている。よく見えすぎちゃってる。だから、ここは前半の地獄盤の曲なんかはすごく似合うんだと思う。ベースがとにかくよく聞こえたから。でも天国盤はきついのかもなあと思う。そしてつづくfeverは今度は今までごりごり鳴ってたタケさんのベースがぬけちゃうから、いつもよりぬるく聞こえてしまった。そのくだりはなんか残念でもったいなかったけれど。nutsはけっこうライブでやるのがむずかしいんじゃないかと思ってしまう。音源での好きな感じを聞けることが少ない。
はいでもここらへんからすごい。次はまだそんなあげて突っ走っちゃうの?!だいじょうぶ?!と思うelectboysがはじまる。この曲のイントロ大好きだからうれしいけど、もしやここでもハンドマイクやっちゃうんかいと。でも今回は首にぐるぐるまきついてなかったな。この曲からの盛り上がりはなんだかえげつない感じでよかった。笑ってしまう。そしてももはダイブまでしちゃう。ちゃんとお客さんが運んでくれててよかったなあと思う。ヒトリエのファンの方達はわりとモーサムを好意的にとらえてくれている人が多かったと思う。なんかこう興味ない趣味じゃないとかで切り離さないし冷めたようなひいて見るというのが少なくすれてないっていうのは若い層だからなのかなとも思えた。なんかこう、やさしい若い人たちがいてくれてよかったねえとしみじみ思っちゃう。
そして終わりがけにタケさんが袖に引っ込んだので、もしや?!?!と思ったらlost in the cityがはじまる。この、はじまりでももとイサムさんが前へ出てきてギターみせびらかすのが前フリにすぎないことがじわじわくる。この段取り感、こなれてるなあ。でもこのときの2人はいい顔してるなと思う。そしてじゃーんと天使のタケさん再降臨。you are rock'n roll着てる時点でうわあこないだ思い出しちゃうと思っていたから、早くもながらまた出てきてくれて、今年最後のライブっていうのもあるかわからんけど、サービス精神あふれでるタケさんにきゅんきゅんする。でもheaven Tじゃないため破壊力はやはり劣る。でもそれはワンマンショーだけの特権だねっと思う。狭いステージでも華麗に舞うところがすごい。
そして最後にto hell with poverty!でしめてくるところがかっこよかったー!ツアーでは1曲目にやっていたこのカバー曲を最後になんて、ニクイなあと思う。さらけ出しまくってほいほいなんでもかんでも落としこんできたところに、最後はなんかフラット平常心でいく。まあでもほんとはうちらこんな感じです、みたいな。妙に、そんな風にきっぱりとした線引きのようなものが見えた。ツアーではこの曲がはじまりとしてのいい幕開けになっていたと思うけど、この対バンにおいてしれっと身を引くような終わり方は印象的だった。そしてこうゆう曲やるモーサムってかっこいいんだよなあって思った。自分のなかでどうゆうモーサムが好きかってつきつめちゃったら、そうなのかなあどうなのかなあ。なんの飾りも衒いもない、ふつーのモーサム。そうゆう感じがして、さらさらすすれるお茶漬けのようで、よかったなあ。
ツアー最終日でなんだかあまりに胸いっぱいになったところがあって、それゆえ空虚感もあった。ごっそり持っていかれてしまったようなうつろさ。それが見事にぎゅうぎゅう押しこまれてぼこぼこに詰めこまれた。穴はふさがった。