新木場スタジオコーストスピッツ主催の新木場サンセットを見に行った。シロップの今年最初のライブだったから。先行予約で申し込んだ時は正直はずれてもしょうがないし、まあ、見れなくてもいいかくらいに思っていたけど、でも当たった。そしてやっぱ行ってよかった。行かなきゃいけない、行くべきなんだ、やっぱシロップのライブは見逃しちゃだめなんだ、もう。そう思い起こさせてくれる8ヶ月ぶりのライブだった。
開場が17時過ぎと早い。わらわら集う人々の中にはシロップのTシャツ着てる人もけっこうちらほら、着てる人はだいたい若い人が多くて、まあ若い人じゃないと着れる張り合いもないんじゃなかろうかと思わず思うが、少なくとも自分より若いような人たちがけっこういるのはちょっと嬉しいようなところあるかなあやっぱり、毎度ながら。解散前からの人も解散後知った人もいるだろうけどなんにせよいろんな人に届いているんだなあと思うと自分が十代のころのことも重なってくる。私はシロップ好きになって音楽に対するとらえ方など、ものごとの考え方を身につけていったところがあるから、世代の違う若い人たちにとってもそのような存在になりえればおもしろいと思う。みんなばらばらの人間が、ひとつの同じ音楽に惹かれあっていることだけは同じだなんて、変で、くすぐったく気持ちわるいけど、無視できない事実だ。まあそのなかにはいわゆるイタイという言動の人もいるのかもしれないけど、私は私に迷惑がふってこないかぎりまあどうでもいい。みんな自分の好きなように好きであれば幸せなんだろう。シロップのライブがあることで生きられるのなら、希望になるのなら、それは力強いだろう。

スタジオコーストははじめてだったものの、下のフロアで見れたらいいかなあと思っていた。運よくPA前があいていたんでラッキー。はじまればきっと前につまってスペースがあくだろうと見込んでいた。そうなったら下のフロアの後方の方がやっぱ密着度はへるし、自由な感じがして最近はそうゆう感じで見る方が好きだな。段差があるとこで見やすいことを優先するモードではない。

シロップはなんとトップバッター。まあ前日のコレクターズがトップだったのを見てその可能性はあるかもと思っていた。ほぼ18時ぴったりに照明が落ちた。ステージには幕がかかっていた。そこからギターの音が鳴り始め、幕が開き始める。これは、この曲は、うわうわうわー、きこえるかいだ!と思ったころには3人が見えていた。もうまさかまさかの始まり方でしびれた。頭ががんがんがんがん前へ先へ走ってしまうようなくらい気が動転しようとするのを理性でおさえようとするのだけど衝動ががんがん突き進んでしまう、ああがあんがんがん、頭ががあんあがんがんと前のめり。こころが、胸が、鼓動がはずんでしまって、こころと頭のスピードがどってんばったん噛み合わず転がってしまうようにそれを取り戻そうと、つかまえて、私の胸をつかまえないといけないとああでもすでに息がもつれる、というようなもはやテンパっていたのか?と思えるほどだ。あとから思えば漫画の動物のお医者さんで描かれている嬉しすぎておしっこじょーともらしちゃう犬みたいだったなと思う。純粋に嬉しかっただけだ。
きょうのセットリストはどんなかな〜なんて考えたりすることは例えばたのしい。私の予想では翌日はきっとやる、やってくれと思っていた。なぜなら最近やってない、しかしこの新木場サンセットという雰囲気にはぴったりくるであろう曲、きっとやると思った。単純に聞きたい。あとは最近の曲のなかならならto be honorかなあと。そして有楽町線にゆられながら、途中眠くなりながら、終点の新木場にむかう最後、地上にあがってくるとこでipodからはきこえるかいが流れてきて、うわあー今日きこえるかいが聞けたら最高だなーと思った。ひらけるように明るくなった窓の外の景色と同時にたちあがるようにきこえるかいは最高だった。まあでもイレギュラーな曲だから本気にはしない。でもやった!そうきたか!最高だな!と思った。
きこえるかいはシロップの名曲のひとつだと思う。ギターは3コード。シンプルなギター、構成で歌がまず映える、そしてあとから入ってくるベースとドラムもよく歌う。力強く美しい曲だと思う。今回一番どうかなあと思っていたのは一曲目の歌い出しだ。去年のツアーでもスーパーアリーナでも歌い出しは弱いのでそれが改善されたらと思っていたが今回はかなりしっかり冒頭から声が安定して出ていた、とてもよかった。もうそれで心わしづかみされる。五十嵐さんが叫ぶ。そこでようやく自分も正気にかえってくる。ああ3人だ、この3人だ、よく知っている気がするのにもうなんか遠く遠くていつもいなくなってしまう気がする、でもまたこうやって見れることが本当に嬉しいんだなあ私は。

次は予想していたto be honor、今回一番好きだった演奏かな。まあやっぱりこの曲自体すごく好きっていうのがあると思うけど、きこえるかいからのこの流れが私はたまらなくいいなと思えた。こうゆうシロップが好きだ!と思った。おさえめの低空飛行のようにやわらかくスタートする、でもそこのふつふつとした密度でわかしていくエネルギーのたまりこみ、そんな色づき方がかっこいいなと思う。最初からあげあげでいくよりは自分にはこうゆう感じの方が温度があうんだろう。それにしてもスタジオコーストはベースとドラムの聞こえがとてもよい。場所によるだろうがPA前は悪くない。だからこの曲でもリズム隊の音の良さがのびのびと体に届いてきてすっごく気持ちがいい。そこに五十嵐さんののびやかな歌がのっかる、うん、これが私の一番好きなやつだ。良いスリーピースの図だ。特に後半の空気読むなのためて音を出す、歌うところは広い空間に気持ちよく吐き出される。息がつまるように、吐き出すように、あふれかえりむせびり返す。充満する。イントロアウトロのギターは大変きれいだ。最後の終わりにかるくトレモロアームをかけていた。

次は生きているよりマシさ、ここでようやくギターチェンジして赤ストラトを持っていることに目がいった。とにかく今回はギターチェンジが多く、一曲目と二曲目でもしたいたんだったかも。まあでもこの曲は赤ストラトが似合うなあって感じがする。最近この曲をコピーしたくBlu-rayをガン見するもわかりきれず、しょうがないからベース耳コピしてみたらマキリンのベースが超かっこよいってことに改まって気づかされマキリンのベースすごすぎるということに感動し、ベースもやったら楽しそうだななんて思ったりして、まあとにかくかなりこの曲を聴きこんでいたせいか、うわー本物の演奏だっていうことで妙にテンションがあがってしまう自分がいた。耳コピ効果絶大なんだなあ。楽しすぎて一番はしゃいでしまった曲。この曲は今後も定番化していくと思う。もっともっと盛りあがれる曲だと思う。マキリンのベースに耳をすまして聞く。聞き込んでいくとポップさからロックさの方へ聞き方が変わった気がする。歌詞もやっぱり面白い。2年前よりどんどん好きになっていく。骨太い寄せつけなさとさらけ出せる正直さが屈託のない楽しさになる。

ここでちょっと五十嵐さん喋る。せっかくこうゆう機会に呼んでもらったので本当はコピーとかやりたいんですけど…キーが全然足りなくて、なんでせめてマサムネさんのリクエストを、と言ってはじまったのはセンチメンタル。うおーー、マサムネさん超ナイスリクエスト、さすがですと言わんばかりの気持ちだ。センチメンタルもまたシンプルコードで弾く超良曲だ。こうゆうことはギターはじめてみてはじめて言えるようになってきたことだから、ほんと、ギターやってよかった。今回とてもよかったのはギターソロ。自分でこのソロは耳コピしてないけど、五十嵐さんがきれいに弾いていたのを見てしまうとやりたくなる。この曲は鈍く重い色や光がさしていて、昔からの名曲として普遍性がある、みたいなそんなイメージがある。生還のときにも鳴らしてる最後の音が大変好き。

ギターチェンジがんがんしながらあげていく次はshare the light、この曲ではSGを使っていたのを確認した。この曲のジャリジャリした感じはSGで出てくる音がはまっている感じはする。客席からは自然と手拍子、これはkrankeツアーの名残か、みんなよく覚えてるなと思いつつ、中畑さんのドラムがぐんぐんぐんぐん立体的に迫ってくるようで興奮する。どこかへ連れていってくれる。ギターとベースのユニゾンが心地よい。この曲のおわりのマキリンのベースがとてもよい。暗闇のなかの遠くへいってしまう。マキリンのベースの一筆描きのように落ち流れていくベースラインはとても美しいものだ。そしてシロップはなんだか最強に見えた。すごくすごくいいスリーピースだと思った。なんでこんなにかっこいいのかと、賞賛するように思えてしまった。久しぶりのライブでもこんなにかっこいいことができるなんてということが、くすぐったいようだった。自分が30になって、またきっと感じ方が全然違うんだとも思った。10代のころには感じられなかったことを今は見ることも感じることもできる。それは誰もが欠けてはありえなかったことだ。3人が3人で音楽をやってくれることも、自分が生きていることも、数年前には考えられなかったようなことで、でも、生きていたらこんなことになったじゃないか。そのことに対する驚きは大きい。そこで色んなことに頭をがつんがつんと打たれ、考えさせられる。もう何度も思っていることだけど、何度でも思わされるのかもしれない。まだいまだに目が回っているような状態でもあるから。

さて次はどうくるんだろうと思った。たぶんまたここでもギターチェンジしてただろう。そしたらなんと、声が聞こえたら神の声さーと歌い出した。うおお、せめてきたなー!と思った。スピッツファン前にそれ言うかー!ってかんじ。てわけでcoup d'etatから空をなくすへ。なんとなくこれはワンマンならではの定番というイメージだ。しかしこの曲では否応なくテンションあがってきてしまうとこにシロップファンの性を自分に感じた。そうゆうものだな…。しかしこれで6曲までやったからもしやこれで終わるのか?!と焦った。これで終わるのはなんかいやだなあと思った。でもやれて6曲だろうと思っていたから。そんな不安のせいか曲のことをぜんぜん覚えてない。でもテンションあがると同時に冷めるみたいな、そんなところもある。

空をなくすがおわっても楽器を置かない!よかった!そしたらなんとやっぱり翌日だ!やったー!うれしい!自分のなかでのシロップの二大巨頭ソングは翌日と明日を落としてもだろう。翌日はシロップ再結成後はやってなかったはず。すごい安心感をおぼえる。音の伸び、歌の伸び、どれもが血が通うように自分のなかを通っていく。ふってくる雨が自分のなかに浸透していくみたいに。そして気づく、五十嵐さんがまた違うギターを持っていることに、それはしかもまさかのジャズマスター?!か、ジャガーか、この2本は見た目そっくりだから違いはとりあえず見分けられない。でもジャガーの方が高額という話。とりあえずまた赤い。好きだなーと思いつつ、なぜ、それならレゲエマスター買い直せばいいじゃないかと私は思ってしまうが、新しいギターなんて買っちゃって!それならライブやってくれ!とつい思っちゃうじゃないか。と思っていたらソロで音外してるよ。まああそこフレット移動大変そうだもんねと思いつつそのギターじゃ弾きずらいんじゃないの?といらぬ心配をしたくなる。同じソロ弾きのところは後半にもあるが後半はやらなかったように思う。また落ち着いて聞きたい。

そんなこんなで35分ほどだろうか、終わった。時計を見たとき、時間以上の濃密なものを感じていた自分にきづく。時間と自分の感覚とのズレ。それはなかなか奇妙なもんだ。すごく良いライブだったと思う。やっぱライブハウスがたのしいなーと思った。下フロア後方はそれなりにシロップファンぽい人たちもいて、最初の時点でかなり前方につまったぶん自由気ままに見れる感じがあってとてもよかった。今度ワンマンやるならここでやってほしい。全体に広いからソールドアウトでもリキッドなどのような満杯感は薄まるのかな。見やすいし、音もいいし。ホールはやっぱりホールの音なんだろう、ライブハウスのぐさぐさ刺さってくる音圧がやっぱりいいだろう。ただ照明は好きじゃないかな。客席天井に使ってるのでLEDっぽい感じあったけど、LEDだと鮮明すぎちゃってちょっと見た目にさめるかなあ。

うーん、今年はもうライブないのか、リリースなくていいからライブはやってほしいが、秋までおうちで寝てますとか言ってたから、なにいってんだかーと思う気持ちはあるけれど、まあじょじょにじょじょに、きっとライブはやってくれるだろうと信じて待つしかない。だってめっちゃよかったもん。いやあ今までこんなに賞賛することあったかなあと自分でも思うくらいだけど、でも五十嵐さんが歌もギターも安定していたのを見るとライブやってなくてもなんかしら生きることと音楽とが並行して進んでいるんだなみたいなことを感じた。ライブたのしいでしょ?と問いかけたい気持ちだ。まあもちろんそんなん昔からわかっていることだろうが。ライブハウスでやってほしいけど、そうなるとチケット厳しいんだろうし、むずかしいところなのかなあ。しかしなー、いいライブだったなー。


シロップ後、サブステージとメインステージで交互に行われるのだがその間がものの2.3分しかない。平日開催ななか、18時にスタートして5バンド出て21時半に終える、とても段取りよく仕切りよく進められていることがすごいと思った。

トリのスピッツ。昔、AXで見たことがある、それ以来。スピッツは幕が開いた状態からふつうのライブみたいに袖からメンバーが出てきた。なんかすごくふつーっぽくて面喰らう。そして一曲目は涙がキラリ、私でも知ってるー!と感動する。そしてサビでマサムネさんのキーの高さに背筋からびびる。そして、昔見たときもそのキーの高さにびっくりしたんじゃなかったっけと思い出す。対バンだと前のバンドがあるから余計にその声の違いに耳がとびあがる。そして演奏もがっちりしている。なんていうか、ライブをやってきているバンドだ。よく音が固まっていて、結びついていて、ああすごいなっと思わされる。知らない曲があってもたのしく聞けてしまう。小学生のころからテレビで見てきている人たちだ。でも今こんな風にライブハウスでライブを見れるのはなんて貴重な機会なんだろうとも思った。テレビで見聞きするものと変わらない、それ以上の気持ちよさ楽しさ、でもテレビで受ける印象と同じで、でもやっぱりそれ以上に感じさせてくれるものが沢山ある、テレビで見聞きするというのはやっぱりぜんぜん違う体験で、音楽を見聞きするっていうのはぜんぜん違う体験なんだと思う。すごいなーと思った。そんですごいいい曲やる。スピッツのライブむちゃくちゃいいなと思った。そうえいば夢じゃないって曲が好きだったなあなんて思い出した。中学生になってたころかどうか。ああそうかそうかスピッツすごいじゃんと、今までほとんど関わりなくすごしてきたがいやぜんぜんそんなことないと思わされたりもする。
mcでは各バンドについても触れた。それはとても印象深かった。マサムネさんが、シロップは久しぶりだったけど、相変わらず、重いね。でも、それがいい!と宣言するように言った。なんかなんかそれがめっちゃ忘れられない。たっぷり含まれた重さを苦笑いするように言ったそれは同じ歌い手としてのエールのようだなと思った。だからこそ、重いねっていうシンプルな、無駄が全部そぎ落とされたそのまんまのような言葉で言えるのかなと思ったし、それはすごいことだなと思った。そしてそのまんま、それがいいと肯定してもらえたのはファンとしてもすごく嬉しかったし、シロップにとってもめちゃくちゃ嬉しいことだよなあと思った。いやー、マサムネさんはなんだかすごい。そのあともベースのたむらさんが、シロップまたやってくれて嬉しいと言っていたし、あーこんな超メジャーな、多くの人から好かれるというか心地いいと感じさせる音楽を作っている人たちからこんな風に言ってもらえてシロップやっててほんとよかったねーって誰かに言いたくなった。
でも、スピッツのライブ見てたらけっこうギターはシロップに似た感じがあるような気がしたりして。ライブだとギターの本数が違うからぜんぜんだと思うけど、スピッツのギター2本はシロップの音源で考えれば似た感じがある気がした。ギター2本あるバンドは音が多すぎて好きになりにくいのだが、スピッツはその点が一切クリアされていた。なんでこんなに聞きやすいんだろうっていうくらい、整理されぶつからない音像のかんじ。それが心地よさという一言では片付かないスキルのような気がした。マサムネさんはアコギ弾いてることも多く、それがまたすごくきれいなんだなー。かと思えばストラトリードギター弾きこなす。ギター2本の音の絡みがすごく気持ちいい。そのつくりの感じはシロップの音源に似たものを感じたなあ。

シロップにとってはいい機会、ライブだったのかなあと思う。私にとっても、すごくすごくよいライブだった。こんなシロップがまた見たい。こんなじゃないシロップもまた見たい。五十嵐さんだったらこの時代をなんと歌う?シロップだったらどんな音楽を鳴らす?シロップの今を見ていたいけどなあ