液体か、涙は または水とゆめ

あなたも誰かの日記に記されているのかもしれない

山本精一の、不自由な世界@bar isshee
千駄木での山本さんソロは夏ぶり、その夏は演歌と歌謡曲を歌う回だったから具体的にはその前ぶり。いつだそれ。山本さんの歌ものでないソロはここでと、大阪と京都と、名古屋で定期的にやってると思うんだけど、それらって繋がってるとこもあればないとこもあるのかな?まあ考えてみたところで本人か全部見てないとわからないんだろう。計画性とかないだろうし。しかしとりあえずここでしか見聞きできないソロがあるのでここには通わざるを得ない。
山本さんから事前に一部は普通のいつも通りの感じでやります、二部はちょっとやっぱりとかなんとか微妙ににごす。なにか企みがあるのがうかがえる。

とりあえずまず完全消灯で一部スタート。この完全消灯が千駄木だねえと思う。最近はMacBook開くこともあったからそのあかりがあったけど今日はそれもなし。よく見えてるね山本さん本人は。電気の少しでもついてる空間と全くついてない空間では目をつむるのも全然違うんだということは改めてよくわかる。暗くなれば自然と目をつむって聞く。それって自然現象かな。しばらくずっとそうしてしまっていると、ちょっと意識が変になると思う。自分の身体の感覚がすーとひいていってて、脳みそだけぽかりとそこに浮いているような感じ、そこにだけ自分を感じて聞いているような感じ。それが知らないうちに無意識にいつのまにかそうなっている。ぼおーとそんな風に過ごしているとふいに自意識がやってくるのか、お?と思って目をあけてしまう。あけてしまうとその体験はもうおわり。終了。夢見てるのと同じみたいだなあ。目つむってても、目開けた時には電気が落とされた時よりいわゆる目が慣れた状態になっていて人やものの姿形の線が見えているので不思議、へんなかんじ。

音数が増えていくととても映像的になるかんじがする。音楽そのものが映像になってしまう。み音と同期したアニメーションのようだったり(ライヒとかの?)、宇宙活動を捉えた映像のようであったり。けっして、その映像に付随している音楽として鳴っているんではなく、山本さんの作り出してる音像自体がその映像になっているというところが自分で言っていても奇妙だが、でもどうなのだ。一人でそんだけふくらませ構築する世界はどんどん扱うメディア、素材が変わっていくみたいにして連なっていく。そのギターソロの世界が千駄木ならではで、好きだなあ。縦長の狭い空間でお客さん同士肩寄せ合ってみんなほぼぐっとじっとしてそれぞれに聞く空間。なんとも言えない濃密なところだなあ。

この山本さんのソロは中身がよく練られているのかいつもまるで一枚のアルバムとしてこれで成り立つんじゃないかって感じさえする。でもこれは一回性のライブなんだから過ぎ去るし残らない。なのでそのときそのとき自分は鋭敏でありたいけど、どうしても無心でずっとはいられず、ぼやぼやどうでもいい考え事が頭にながれてくる。しかし時々はっとして音に引き戻される、の繰り返し。しかしすごい。音は増え、変化し、また次の音へいく。最後の方はSFの世界のようで、自分の一番外側の皮膚がびりびり言いながらやばい世界へ入っていってしまうというか、こちらが入っていくんではなく、向こうからその異界の境界線がびりびりやってくるのだった。その境界が身体の表層でびりびり言わしている。吸い込まれるとかでもなく、前方からそれが空間を侵食してきてをををを、、とそんなん完全にSF体験だ。すごいなー、すごいなー、なんであんなことできるんだろう。目の前にいる人が目の前でそれをやってるわけなのに、解き明かせないものだ。

普通といえば普通だけどべつにけっして普通ではない。でも、このあと繰り広げられる第二部を思えばたしかにエレキギターの1〜6弦が正確なチューニングのもとにはられ、エフェクターを山本さん本人が駆使し、シールドでギターとアンプをつなぎ、曲を奏でるようにギターを弾いていたことを考えればそれは普通だった。そうゆう普通ってことを言ってたのかと思い知らされる展開へ。

第二部、さてどんなんがはじまるのかと思ったら今日のタイトル通り不自由な状況を作ろうとおもいますとかなんとか。えーと、みたいな感じで数秒だまり、エフェクター詳しい人がいるんで、エフェクターを人に踏んでもらいたいと思います、とか言って最前に座っていたいつも拝見するtさんを山本さんが指名する。だれもが、えっ…どうなるのみたいな空気が若干ながれる。突然の指名に戸惑いながら謙遜しながらささっと受け入れるtさん。すごいな。さて始まってみるとこれがなかなか良かった。おもしろい。エフェクター詳しいうえに山本さんやその他の音楽も精通しているtさんだからこそのものも大きく影響あるのかなと思うけど、たしかに山本さん一人でやるのとはぜんぜん違ったものになる。はらはらどきどきしながら、でもどんどん楽しんで聞いていける。見事だった。山本さんもこれはけっこうおもしろいですねと満足そうだった。

次は前にもやったことがあると言うが、お客さん、ギターを触ったことのないやったことないお客さんにチューニングをいじってもらうというもの。お客さんのなかで山本さんのギターがまわっていく。中国系かなっていう外国人の人たちがいて、そのひとたちがすげえペグをまわしていた。大胆な民族性を感じる。そして山本さんのもとに戻ったギター。うおおおなんとも言えない音になっている。しかしもちろんさらさらーっと弾きこなせちゃう山本さん、さらに自分で全ての弦をゆるめてだるだるにさせて弾く。かっこいい。これはこれの音楽をつくれてしまうのが当然ながら山本さんで変な感じが一切しない。そうしたら山本さんが考えてみたら30年前こんなんばっかりやってましたわとか言い始める。全然不自由じゃなかったです、だって俺これで弾けますもんとかなぜか超得意気自慢気に言う。ええそうですね、そうでしょう、たしかになんの不備も不満足感も感じなかったですと思う。そのあとは全部の弦を同じ音にチューニング、これでCとか弾くといいんです、と言う。これでもまたちょっと弾いてくれる。たたたしかに、おもしろい。ソニックユースがこんなんやってる、とか言ってたのかな。そうなのかー。いい音っていうのはいろんなところに隠れているんだなあ。そうかー。

次に、ギターの弦を全部外しますと言う。外すのがめんどうなのでイッシーさんにペンチを借りて切ってしまう。もう次はなにがどうなるんだかわからないまま山本さんの挑戦をいろいろと見ているかんじ。なんだこれはと思いながら。暗いのでよく見えなかったけど、主にピックアップのあたりでいじってなんかやっていたのかな。山本さん曰くちょっとずるをしてて、弦が少し残っていたのを活用したらしい。たしかこのへんからノイズまみれになっていく。山本さんの音の出し方が容赦なくて、この空間でそんなに出すの?ってくらいとんがった音を爆音してくるんで耳のヤバさを感じること数回。私はまだ耳をイカれさせたくないのでそっと耳に指はあてる。たしか最後は机だかギターだかをばこばこ叩くパーカッションを加えた。山本さんのたいこは初見だな。けっこうよかった。

次はギターをはなれますと言って、ギターからシールドをぬき、シールドでやりますと。昔これでシールダーって呼ばれてたんですとか言う山本さん。シールドをマイクに近づけると本来すごい鳴るらしいが以外と鳴らず。が、あとは暗いので見えてないけどノイズの世界へ。ここらへんから記憶薄い。ノイズは記憶を圧縮劣化させるのではないか。

そして次はこれはあんまり見たことないかも、珍しいんじゃないですかねと言ってギターをホルダーに置き、念で鳴らします、と言う。苦笑、ここは苦笑でいいんだろうか。まじめに僕、超能力があるんです、ほんとに生まれた時からギターが弾けたんです、念送ったら音が鳴るんです、などと真面目そうに語る。山本さんなんていつもウソとほんとの境界上なのでなんでそんな嘘話をこんなに本気でしているんだろうかと思う。ギターの神童と言われてたんですとかなんとかとも言ってたかな。こうゆうのをぺらぺら喋る山本さんはこわすぎる。そしてアンプのじーっという音だけまわるなか、山本さんが念を送る。送ってるのかどうかも暗くてよく見えないけどなんかロダンの考える人みたいなポーズをとっているっぽい?終わりの方でざざっと音がするが、これ?ってかんじ。山本さん、触っちゃいました、とズルを告白。でもメロディ鳴ってるの聞こえたでしょ?もう一回やりますと言ってもう一度念を送る、のをお客さんも一緒になってじっと聞いて?いる。山本さん、鳴りませんね、嘘でした、でもメロディ鳴ってたの聞こえたでしょうと言っておわる。なんだこのくだりは。スカムを連呼し、30年前にやってたようなことをまたやりたい、なんでもやりたい、人形劇もやりたいんです(この日東京での初公演人形劇のチラシが入っていた)と言うだけあって、ほんとなんでもやる、虚実ないまぜとはこうゆうことかと、こうゆうことかな?なのかな?そんな定義された言葉にあてはまるかどうかさえこの場にいるとわからないでいる。私たちはだまされたのか。

これでできることはだいたいやった、あと何かまだありますかねえ?とイッシーさんに話しかける。イッシーさんは楽器以外をやるとかアカペラを提案する。楽器以外ということでスピーカーだ、と立ち上がる山本さん。やはり暗くてわからなかったけどなんだろう、音叉とか?なにか小さい棒みたいなものでスピーカーを叩き出す。笑いがこみ上げてくる。こうゆう時の真面目と滑稽の交わりがすごい。またノイズになって、終了。

本当はもっとこうゆうのをやりたい、次はもっとでかいとこで、草月とか(ジム・オルークがなんちゃらするのが許されるくらいなんだから〜とか言ってた)、話はあるんです、とかなんとかかんとか。次はなんかをやりたいって言ってたな、なんか、こうゆうことをもっとやっていきたいみたいなことをとにかく言っていた気がする。山本さんはいくらライブに通えどますますわからない。微々たることしかわからない。仙人みたいなもんなのかなって、思うことにした。