久しぶりに湯船に30分くらいつかった。来月受ける検定試験のテキストよみながら。出たあとに体をぐいーと前にかがめる。しばらく伸ばしてなかったような筋が皮膚の内でびーんと引き伸ばされたよう。見えないものが感じることで見えるような気がするふしぎ。この昨日と今日と体がだるくて仕方なかったけれど、だいぶすっきりした。

昨日は授業中にカッターで指を切ってしまった。かたいものを切っていて、力任せにカッターをおした勢いで爪の近くを浅く切っただけ。ただその瞬間が早すぎて自分でも一瞬なにが起こったかわからないような時間があった。あら、切っちゃった、と思って、あちゃーやっちまったー、しかし隠し通せるもんでもないしバンソウコもらいにいかなくちゃと一人頭のなかで考えてから指切っちゃったんでとその場を立った。水道ですこし流して、先生にバンソウコをもらいながら怪我の経緯を話していた。
そしたら突然、あれ?あれ?っと思ったその瞬間にはもうすでに立っていられず、視界が消えていった。血の気がずざーっとひいていく、まさしく浜にのりあがってはひいていく波の現象が自分の頭のなかでおこったみたいに。そこからどうやってすぐそこの先生部屋の椅子に座れたんだかよく覚えていないが。座って、あれー?なんじゃこりゃーと思っていたらなんか体のあちこちの穴からいろんなものが出てきちゃうようなむずむず感がしはじめて、うわどうしようと焦りの気持ちがうまれた。しかし次第にそれは通り過ぎはじめて、しかし今度は体の自由がなくなるようにひいっと息の根をとめられるみたいにまともに座ってもいられず、頭が後ろ横にたれてしまい、もはやまぶたは閉じ始め、呼吸もはやくなる、それは自分の耳に聞こえてくる音でわかる、そのときはもう視界はなくて、ただ自分の息する音が息が見えるみたいに聞こえた。先生が隣で必死になにか言っているのもわかるんだけど、大丈夫?という問いにはもはや答えられないんだなあ。声が出ない。首の後ろに汗がわきでている。次第に意識が遠のく。そして次第にもどっていく。それはいつもかえってくる、という感覚だ。口が動かせるようになる、声が出せるようになる、目を開けられるようになって、おちついた呼吸ができるようになる。わ、わわ、わわわと闇から光のある場所へかえってくる。ああかえってこれたぁという安心感がその時は一番大きいかんじがする。
その時の意識が遠のいていってしまう感覚は何度体験してもあとから思うと死んでしまうかのような大きな波にさらわれる感じだ。そしてそこはやはり誰とも共有できない絶対的に唯一自分だけの世界。肉体的にひとりにおとしこまれる。精神的においつめられていって外の世界すべてが遮断されて考えつめていった結果ひとりの真っ暗闇に入るのも怖ろしかったけれど、それは精神意識からの流れだ。肉体、脳からの運びによる物理的に感じられる孤は手応えの生々しい実感が残るから、なんだかいやなかんじだ。
いつごろからか、一年に1~2回こんな貧血みたようなことがおこる。原因らしきものは様々、その都度ちがう。今回はふりかえってみれば指を切ってしまったことに対して内心びっくりしてしまっていたせいかもと思う。実際は冷静に行動していたけれど、むしろそれは無理を通していてほんとは切った瞬間から騒いでいればよかったのかもしれない。でもカッターで切っちゃうのは自分の注意不足でかっこわるいことだから、冷静をかなり装ったのかもしれない。その自制意識。でも本当はとても驚き、ひやっとしていた。それが時間の経過のなかでおさえきれなくなった。これはあれだな、ラースフォントリアーのアンチクライストを映画館に見に行ったときに同じ症状が起きたときと似ているパターンかな。あまりのバイオレンスシーンの連続に私は正気を保てなくなった。ラストのラストで貧血。医療ドキュメンタリーなんかで見る手術シーンなどはまあ平気だが、映画だと想像力が刺激されて皮膚感覚にびりびりしてしまうんだなあ私は。下にナイフだかなんだか刺すシーンではじまる映画もだめだったし。痛みそのものよりも、意識的ショックが作用するらしい。こうゆうときって想像が想像を越えるみたいな、イメージすることをぶっとばして脳をストレート打ちする感じかな。

とりあえず私がとんでいった間に先生がバンソウコを貼っておいてくれて、血はとまりだしてるし傷は浅いよとのこと。はいーそうですねぇーとなんとかきれぎれの返事をかえす。少し休み、立てるようになり復帰。しかしこれ体力使うわー。
教室戻っても、顔真っ白だよと言われ、椅子に座ってぼーっとする。ふりかえる。なんだかこれをするたび寿命が縮まっているみたいな感覚がする。そうなるとこれは思ってるより早く死がやってきたりするのかしらと思う。すごく、むりやりに何かをすりへらしている気がする。どっとした疲労感。湿気を沢山すったような重たさが残る。

母曰く、若い女性は自律神経が敏感だからとかなんとか。若い証拠といわれてもなあ。やはり自分の体の内などわからないな。


今日は午前中でおわったため一年に一度くらい行くマックへ行き、クオカードで払う。カウンターにはメニューがなくなり、商品を待つ間には砂時計が流れ、60秒以内に用意できなかったのでとバーガー無料券をくれた。なんなんだろうこれはと不思議なことに思えてしたかならなくなった。

帰宅して録画の孤独のグルメを見て、レンタルしていたfemaleという5監督によるオムニバス映画を見た。塚本晋也目当てに借りて、他の監督のことはすっかり忘れたまま見始めた。一番よかったのは塚本晋也であった。やっぱり私すきなんだなあ、なにがどこがとうまく言えないんだけど、すべてがすきだ。ごうごうとせまってくる映像に、見ていると私が生き生きしてくる。そんなようなこと。よくわかんないけどすごく自分にフィットする、吸着率抜群みたいなかんじだ。短編でもぶれることのない塚本晋也映像はかっこいい!塚本晋也の映像とケッコンしたいみたいなそんなかんじ?
あとは松尾スズキ作品も悪くなかったけど、そんなに好みじゃあないんだよなあ。西川美和作品はいかにもこの人らしいのかもしれない。クレジットで監督名がわかってびっくりした、それは男性監督だろうと決めつけて見ていたから。小学生の男の子の視点からあんなふうに大人の女を捉えるところはさすがだなあと思った。おそるべし。しかしあまり好きじゃなかった。独特のテンポが短編だとつらいのかも。

さて明日は学校行事だー。あまり乗り気があがらない。