液体か、涙は または水とゆめ

あなたも誰かの日記に記されているのかもしれない

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22日は千駄木のbar isheeで山本精一さんのソロを見た。2daysの2日目、ギターソロテクノ編。ここは前から山本さんがソロをやっていて気になっていたけれどなんか人がいっぱいで狭くてみたいな話を聞いてしまうとなにぶん怖れが先立つのだった。がしかしなぜか行くなら今だという気になり予約をした。先月の山本さんソロでまだまだ私は山本さんの音についていけてないような、もっと聞かなくちゃという気がめらめらしていたからだろうか。なんかそんな感じ。


29日は大友良英3デイズの2日目夜公演へ。今年も芳垣さんの出る日はONJTと去年と同じ、ゲストにピアノの佐藤允彦さん。前から5列目くらいの席でまあ芳垣さん見えなくてもしょうがないかなくらいでいたのに、はじまったらなんとちょうど芳垣さんがばっちり見えるではないか!水谷さんもよく見えるが大友さんだけほぼ隠れて。ふがふが芳垣さんを真正面からよく見れるなんて今年はついてたなあ。
一部はトリオでの演奏。二曲やったんだけれど予想外なはげしい方向へ。このトリオを見るのが何回目かっていったらそんなによく見てるわけでもないんだけど去年とこないだのグッドマンではわりとおとなしめな感じだったと思う。グッドマンは山本さんもいて、わりと山本さん大友さんのギターが前にあったし。考えてみたらゲストなしで見るのは今までなかったのかも?でもそうだこの3人はemergency!のメンバーでもあるんだからこうゆうふうにもいけるよなあそりゃあと納得したりする。
それでも一曲目ではうわなんだこの感じは?ちょっとプログレっていうかクリムゾンみたいなかんじ?似た音のにおいがする!と思ってぬおおなんだこれはと思う。なんか不思議に思ったのはこの3人がこうゆう音を出しているただ中にいるということだった。3人の他でのプレイも少しは見てきているけど、3人でこうゆう音楽もありえるんだということがすごく新鮮だった。二曲目ではなんとなく高度なロックのセッションみたいだなと思った。ロックっぽいんだけどそれだけじゃないうき立ちがあって、でもそのロックっぽい感じっていうのは自分のなかで親しみがあってでもこの面子でそこをまともに聞く不思議はたしかにあった。他と何が違うかっていうとわからないのだけど、芳垣さんがロックぽいドラム叩くとこんなんなのかと思った。こないだのスーパーカーより断然いいなと思う。後半で芳垣さんがめちゃくちゃ水谷さんに眼力とばしてるなと思ってそこの2人のせめぎあいがすごくて、でも芳垣さんがめっちゃにかーって表情でてて、この日は何度かそうゆう芳垣さんを見た。うひゃーたのしそう。リズムが何拍であるとか正確なことはわからない。でもこの人たちのならす音のなかで心地よく体が揺れてしまうのはたしかなんだなあと思う。その私の身体の自由さは自分でもふしぎなくらい自由だなあと思われた。大友さんのギターはクリアーでのびやかだ。雑味が本当にない。そう言ってしまうとまるでつまらない音のようでもあるけどでもそんな音は他に聞かない。なんでこんなにストレートな音してるんだろうと不思議になるくらいなんだけどそんな大友さんの音がうねりまく。最後は飛行機がまるで垂直に高度をあげていくようなスピードとひきつりひねられるような圧がかかりあがるようだった。すごかった。すごいぞ。

二部からゲストの佐藤さんも加わる。白髪まじりの穏やかそうな方だ。するりと入りこんできたその最初の一音目から、うわっこんなふうにピアノが絡まるんだと驚く。ひやっとした。ピットインで通るピアノの音は美しいよ。今ここにある空気に呼応して出てくる音はみずみずしくて出来立てほやほやの川の上流のようだなと思った。終わりにかけて芳垣さん佐藤さんが視線のやり取りがあるのが見ていてわかる。芳垣さんはまたにかーっとしている。芳垣さんのインプロでこんなにむきだし感のあるのもあまり見たことがないかもしれない。一曲目の終わりで大友さんが「落ちついてできないの?」と芳垣さんにひとこと。「ええ?!おれはいつも落ちついてやってるよ。佐藤さんがすごい速さでくるから〜」とかえす芳垣さん。佐藤さんもひかえめに「人のせいにしないでよー」と言っている。

見ている最中だったか、見終わってだったかに、ああ、と納得するような気持ちがでてきた。今年になってからかここ最近だったか、少しもやもやするようなところがあった。自分のなかで例えば芳垣さんや山本さん、ろぼなどの音楽とシロップが好きなことに隔たりはあるのか?どうなのな?みたいなこと。そこらへんにすごく境があるとも思っていないけど、でもやっぱりなにかとなんもかんも違うしそこを自分と同じように聞く人はなかなかいないように思う、そうなると私のこのそれぞれを両方を聞く態度はちゃんとひとつのまとまりあるものなのかどうか疑わしいような気になるのだった。どちらを好きな気持ちも同じだけどほんとうに同じなのか、構造的におかしくないのかなみたいなことが、そんなどうしようないところが気になっていた。それは自分の中でまるで違うことになっちゃうのかどうか、分裂なのか統合なのかみたいな。
でもこの日のライブ見てたら、楽しんでる自分がいるのがよくわかったら、ああそうか〜とすんなりわかることができた。今年になって、今になってようやくバランスよく自分の好きな音楽をどれも聞くことができたんだなーと思った。それらを好きで楽しむことはみんな同じだと思った。今ようやく同じになってるんだとわかった。
だってよくふり返ってみると、シロップからはなれていった、ライブに足を運ばなくなった一因として芳垣さんたちの存在はあったんだ。ちょうどシロップがなんだか売れてきて、私は五十嵐さんのライブでの粗さが気になり始めていて、そしてライブビートなどを通じて少しづつ色んな音楽に興味をもちはじめていてDCPRGなどを知っていったのも大きかったと思う。そうたしか色んなバンドに目を向け始めていた。そこでそうゆう演奏力の高い人たちを見てしまったら、シロップがしょぼく見えてしまったようなところがあった。そのときの私にはシロップのライブでの粗さより、そこで自分の気持ちが萎えてしまうことより、興奮するような正確さと変幻さがあるようなライブを見聞きすることの方がより良いんじゃないかっていう思いはあった。それはあった。それは自分が子どもだったんだとも思える。熱しやすく冷めやすくだったとも思う。そこにはシロップに対する自分の思い入れが強すぎた良さも悪さもあるように思う。あとから思えば、なんでちゃんと見続けられなかったんだろうっていうのはあるけど、でも、あのときはそうだったんだから、しょうがない。
よって、私の中でまず昔からしてその両者は同居していなかったのだ。流れの過程になっていた。だから今になっても相容れないような気がしていたんだろうと思う。もちろんそんなこと言ったって両者ともに好きなのは事実なんだからしょうがない、確かなことでひとつの私が二つを好きだろうとはわかってる。でも、それって変じゃないかな?っていう疑問はあった。そこにどうも実感を持てなかったと思う。
けれど、ああ、どちらをも楽しむ感覚は一緒だ、同じだって、楽しんでる自分を自分で感じたときにようやく実体験ができた。どちらをもの楽しみ方も、私が楽しんでいるというそのものは同じだーと気づけた。うんうんおんなじなんだ、大丈夫だ、両方好きで一緒でいられる、どちらも好きなのが、そうなっているのが今の私だ、私がそうなっていると思えた。
っていう、なんて、言葉に書き連ねてしまうとなんて些細でどうでもいいような話なんだろうと思う。はたしてこれを人が読んで伝わるものがあるのかどうか、甚だ疑問でさえある。けれど、そんな個人の中でしかつじつまのあわないような合理性のないような脈略のないようなものことが、それが私だけのものだから、他の誰とも共有しえないものだからこそ私にはそれがすごく大きなことがらで、一人でぎゅっと抱きしめられるんだと思う。一人だけでぎゅっと抱えられる、誰にも渡せやしない、私だけの私の中だけのこのどうでもいいことがらをでも私は高らかに叫びたい。私はすごいもんを抱えてんだって。誰にも渡しやしない、誰にも見えないそれを一人で抱えてほくそえんでるんだ。
誰とも共有したり、できたりなんてしないんだってことを、私は抱えていたい。誰もわかってくれなくて、共有してくれなくていい。そんなのできっこないんだ。自分が見た風景は自分にしかない。それを意固地に守りたいんだ。私にしか見えてない、重ね合わせていないことがらを、ぺたぺたと粘土をこねては塊にしていくみたいにして。

なんだか話がずいぶん飛んだけれど、佐藤さんが加わってからの演奏がほんとこれまたすごくすごくよかった。めちゃくちゃかっこよかった。芳垣さんがあんなに解き放たれる感じはあまり見ない気がした。佐藤さんの方が年上だと思うし、そう一緒にやる相手じゃないだろうし、前半からの流れなども影響しているのかもしれないし、ああそうかこうゆうことも起こるんだ!そうか!となんだか改めてインプロってもんの素直で率直でまっさらにぶつかりあえる音楽の素の姿を見せてもらったような気分になった。大友さんは見えずでわからずだけど、他のお三方がそれぞれにうわーって興奮していくような表情とそれに呼応していく音、様を見ているこちらはそのときほんとすごい贅沢をしちゃってるんじゃないかと思う。でも、同時に、その渦中にいるご本人たちは一体どんなどんな心地、手触りのところにいるんだろうと思う。みんなあんな苦しそうでいて嬉しそうな顔をして、そこはどんなにおいのところなんだろうかと思わず思ってしまうくらい、演奏している人たちそのものが魅力的であるというのは、ほんと、うれしいな。うれしくなった。
アンコールも最後の最後、どっしゃんといくんだけどそれがまさに終わりなんだ。あがりきった高度から、どうやらぶじ地上に着陸したようだった。

ついでにライブ行く前には渋谷でようやく映画「恋人たち」を見た。公開から1カ月過ぎて時間も一回のみ、平日の昼間なのに席はほぼほぼ埋まっていたからなかなかやるな。