なかなかなかなか。

昨年出た小林紀晴の「メモワール 写真家・古屋誠一との二十年」という本は古屋誠一を知るにはたいへん良い一冊だと思う。古屋誠一の写真が好きなもののなかなかその具体的内容というか中身にまではたどりつけていなかった私にとっては貴重であり、また、古屋および古屋を追い続けた小林紀晴のその姿にいささかのおそれをも感じるのだと思う。とにかく、この二人のありようにその関係性にもまた魅力があるものと思う。私にはそこも興味深かった。なにより、私には古屋の妻に関する仕事の仕方には大変な興味がある。自殺した直後の妻の写真というような奇抜さだけでなく、その死んでしまったいなくなってしまった過去の妻の写真を何度も繰り返し編み直し発表するという行為に大きな興味をもった。過去を繰り返し何度も見ようとすること。過去に何かを見つけ出そうとすること。なにより、やはり、妻のクリスティーネがもつ美しさは、病んでいくもののうつくしさはどうしようもない。